近年、子どもたちのインターネットやゲーム、スマートフォンの過剰な使用により、ネット依存症が深刻な社会問題となっています。「うちの子、もしかして依存しているのでは?」と不安を抱える保護者も増えているでしょう。
一方、学校ではICT端末を用いた学習が日常的になっており、子どもたちにとってインターネットはますます身近な存在となっています。
こうした背景から、学校や家庭でのネット依存症予防教育への関心が高まっています。この記事では、ネット依存症の予防教育の動向や具体的な取り組み事例を紹介します。
予防教育が求められる背景と重要性
ネット依存症とは、インターネットの過剰な使用により日常生活や学習面、身体面に悪影響が出ているにも関わらず、自分の力では使用をコントロールできない状態を指します。中学生や高校生、大学生といった若年層に依存のリスクが高いことが明らかになっていますが、近年は低年齢化が進み、小学生にも広がっているのではないかと懸念されています。睡眠不足や学習意欲の低下、対人関係のトラブルなど多様な問題が生じています。
こうした問題は、家庭だけで解決することが難しく、子どもたちが集団生活を送る学校の果たす役割が非常に重要になっています。
学校での具体的な取り組み事例
学校現場では、単に「使用時間を制限する」「依存や悪影響について危険性を伝える」といった従来の指導法だけでなく、子ども自身が主体的にインターネット利用を管理できるよう、自己管理力や自己肯定感を高める教育プログラムが注目されています。
例えば、日本では、従来の情報モラル教育からデジタル・シティズンシップ教育の導入が進んでいます。この取り組みでは、児童生徒がデジタル社会で適切な判断と行動ができるよう支援することを目的としています。 デジタル・シティズンシップ教育を実践することで、受動的な使用や不適切な使用を避け、主体的でバランスのとれた使い方を学ぶことができます。
また、海外の学校においても具体的なプログラムが開発され始めています。Carrasら(2024)は、問題のある利用を防止し、デジタルウェルビーイング(デジタルメディアとテクノロジーの健全な利用と、過剰利用による問題の発生がない状態)を促進するための教育プログラムについて、複数の研究をレビューしました。レビューの結果、プログラムは以下のアプローチに分類され、これらのアプローチを組み合わせたものが多いことがわかりました
家庭での具体的な取り組み事例
家庭でも予防教育への取り組みが進んでいます。オーストラリアのMarshallら(2024)は、ゲーム行動症(ゲーム依存)やスマホ依存に対する保護者向けの教育プログラムを実施しました。このプログラムでは、保護者に対して子どもとの効果的なコミュニケーション方法や具体的な家庭ルールの設け方、スマホやゲームの利用制限に関する明確なガイドラインが提供されました。結果として、多くの家庭で依存リスクが低下する効果が確認されています。
ノルウェーのKrossbakkenら(2018)の研究では、保護者向けにゲーム依存予防のための具体的なガイドブックを提供し、ゲームの時間管理や代替的な余暇活動の推奨、親子間のコミュニケーションの取り方について具体的なアドバイスが示されました。この取り組みにより、子どものゲーム時間が減少し、依存の症状が改善されたと報告されています。
香港のLiら(2019)の研究では、「Game Over Intervention」という保護者向けのプログラムが展開されました。具体的には、保護者が子どものゲーム利用についてのルール設定や管理スキルを身につけるワークショップ形式のトレーニングが行われました。このプログラムを受けた家庭では、ゲーム時間の管理が改善され、親子の関係性も向上したという効果が確認されています。
今後の予防教育に向けて
今後のネット依存症予防教育においては、子ども自身がインターネットとの上手な付き合い方を学び、自ら望ましい使い方を選択できる能力を育むことが重要です。そのためには、学校、家庭、地域が密接に連携し、包括的なサポート体制を築く必要があります。
さらに、子どもたちが自己管理をしていくスキルや自己肯定感を高めるための具体的な教育プログラムや指導方法を積極的に取り入れることが求められるでしょう。子どもたち一人ひとりが、ネット社会の利点を生かしつつ、安全で健康的な生活を送れるよう、社会全体で支えていくことが不可欠です。
総務省:家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ
https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/parent-teacher/digital_citizenship/practice/
Carras, M. C., Aljuboori, D., Shi, J., Date, M., Karkoub, F., Ortiz, K. G., Abreha, F. M., & Thrul, J. (2024). Prevention and Health Promotion Interventions for Young People in the Context of Digital Well-Being: Rapid Systematic Review. Journal of Medical Internet Research, 26. https://doi.org/10.2196/59968
Marshall, B., Warburton, W. A., Kangas, M., & Sweller, N. (2024). Internet gaming disorder (IGD) and smartphone addiction: Parent intervention trial. Australian Journal of Psychology, 76(1), 2396961. https://doi.10.1080/00049530.2024.2396961
Krossbakken, E., Torsheim, T., Mentzoni, R. A., King, D. L., Bjorvatn, B., Lorvik, I. M., & Pallesen, S. (2018). The effectiveness of a parental guide for prevention of problematic